古代から愛されてきた健康食「スッポン」の秘密

日本では鍋として食べられることが多いスッポン。

スッポン(鼈)というと、精力がつくなんてイメージを持っている人も少なくないかもしれませんね。そもそもこのイメージはどこから来たのでしょうか。

スッポン料理とその歴史、人間との関わり、なによりスッポンに含まれるコラーゲンなどの豊富な栄養素について、勉強してみましょう。今日からスッポンのイメージが大きく変わるかもしれませんよ?

桶に入ったすっぽん

スッポンってどんな生き物?

亀の仲間のスッポン。大きさはおおよそ40cmほどで日本を始めアジア各国やロシアに生息。ただし亀と違い、鼻の尖ったユーモラスな顔立ちをしているので容易に見分けがつきます。

ご存知のようにスッポンは水辺や水中に住んでおり、この長く尖った鼻をシュノーケルのように水面に出して息継ぎをします。

またスッポンは顎の力が非常に強く、「雷がなっても離さない」という伝説があるほど。実際は、地面に置かれたり水の中に戻してやればすぐに口を開けてくれますが、この噛む力の強さ粘り強さも、精力がつくというイメージにつながったのかもしれませんね。

スッポンの最大の特徴は、その甲羅。一般的な亀は硬い甲羅を持っていますがスッポンの背中は非常に柔らかいのが特徴。

この甲羅にはコラーゲンが豊富に含まれており、鍋などにするとプルプルとした食感が楽しめます。とくに、“えんぺら”と呼ばれる甲羅の縁の部分は、食感も良くスッポンの身の中でもとくに美味とされています。

スッポン料理の歴史

日本でスッポンが食べられ始めたのは非常に古く、なんと縄文時代には食べられていました。スッポンは主に関西において鍋にされることが多く、これをスッポンの甲羅の形になぞらえて「まる鍋」と呼んでいました。

このまる鍋では、スッポンの身や皮だけでなく、膀胱・胆嚢と骨や爪を除くすべての部位を調理します。

もちろん日本以外でもスッポンは食べられており、中国でも周王朝時代にはスッポンを専門に調理する鼈人という役職があったとされています。

かの項羽の妻、虞美人も戦いに赴く夫のため、スッポンを使った鍋をつくっていたと伝えられています。

また、意外にもフランスでもスッポンはトルチェと呼ばれて重宝され、スッポンの旨味とコラーゲンたっぷりのスープは人気の高いメニューとなっています。

スッポン料理の栄養素

古くから滋養強壮に良いとされるスッポン。では実際にその栄養素にはどのようなものがあるのでしょうか。

スッポンスープ

こってりした印象のあるスッポンですが、カロリーは100gあたり196.9kcalと控えめ。

特筆すべきは「アミノ酸の含有量」で、人間が体の中で作り出すことができず、食事などを通して摂ることが求められる必須アミノ酸10種類を含む、20種類のアミノ酸が豊富に含まれています。

また、ビタミンB群や鉄分、カルシウムなども豊富。

そして、忘れてはならないのがコラーゲン。やわらかくゼラチン質の多い甲羅の皮や身など全身に豊富なコラーゲンが含まれており、スープなどで食べることで余さずその成分を摂取できます。

アミノ酸、ビタミンB群の主な効果・働き

【アミノ酸】

ヒトの体を構成するアミノ酸は全部で20種類。それらは、体内で合成できるアミノ酸「非必須アミノ酸」10種と、体内では合成できないために食べ物などから摂り入れなければいけないアミノ酸「必須アミノ酸」10種とに分かれます。

これら20種のアミノ酸はそれぞれに構成する部位が多少異なるものの、全身の細胞を正常に機能させるために欠かせない物質であることに変わりありません。

肌、骨、筋肉、血液、ホルモンなど、加齢によって機能が低下しやすい部位に良質なアミノ酸を補給することで、体の中から美しさを作り出します。

【ビタミンB群】

ビタミンB群とはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンなどを指します。

その働きは別名「代謝ビタミン」と呼ばれるように、酵素の補酵素として、体内のエネルギーづくりを担っています。

また肌や粘膜、髪などに栄養を届けたり、炎症を抑えたりする働きがあるものや、糖質をエネルギーに変えるもの、抗酸化作用のあるものなどがあります。これらビタミンB群はどれか一つだけで特定の働きをするのではなく、複数のビタミンB群が複合的に働くことでより効果を発揮する栄養素です。

高級食材スッポンを毎日摂りたいなら!

スッポンは江戸時代には庶民の食べ物として定着していました。しかし、現在は高級食材となっており、なかなか口にできないものとなっています。

近年では静岡県や愛知県、沖縄県などで養殖が進められ、また若手の料理人が安価なスッポン料理を提供しようと努力しているようですが、それでもまだまだ毎日口にするというわけにはいきません。

栄養価が高く、健康や美容・美肌に良いものであっても、定期的に摂取できなければ有用であるとは言えません。

しかし、近年ではスッポンの良質なアミノ酸やコラーゲンを凝縮した各種の健康食品が各社から出回っています。それぞれの栄養素の含有量や価格帯などをよく見極めながら、健康食品を選ぶのも一つの賢い選択。

お椀に取り分けられたすっぽん鍋

もちろん、たまには贅沢をしてスッポン鍋やスッポン料理に舌鼓を打つというのも健康はもちろん、心にも栄養を与える素敵な食習慣です。

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